貴方
に
。
朝、いつもの様に一日が始まる。
大佐に書類を届けて、自分の仕事に移ったり。
大佐は、いつもみたいにサボり始めて。
いつものように私が大佐に忠告する。
「大佐、真面目に仕事して下さい」
と。
しかし、軽くあしらわれて、私は溜め息を付いた。
どうしてこうもこの人は私を困らせるのかしら。
それとも、之も大佐が分かっていてやっている事かしら?
「大佐、余り私を困らせないで下さい。
ただでさえ一日の労働がきつくて疲れているのに、
之以上悩みの種を増やされては私が持ちません」
そう言うと大佐は一時的に仕事に付いてくれるけれど、
暫くするとまた同じ様にサボってしまうし。
如何したらヤル気になってくれるのかしら。
私はまた溜め息を付いた。
そこに、聴き慣れた声が近づいてくる。
「大佐〜、来てやったぜ」
エドワード君とアルフォンス君ね。
大佐が呼んだみたい。
大佐はいつもの様に椅子に座ったまま微笑んでいる。
大佐がまた良からぬ事を二人に吹き込もうとしてる時の笑顔。
まだ15歳と14歳の二人に何を吹き込む気かしら。
変なこと言わないと良いけど・・・。
「・・・ホークアイ中尉。ちょっと良いですか?」
その時、私は呼び出されて、後の話は聞けなかった。
最初の方は今まで二人が行った場所の事とか、そんな話だったけれど。
私は大佐の部屋を出て、呼び出された所へ行った。
「・・・で? 用事は何だっての」
エドが少し怒り気味で言った。
ロイは微笑んだまま。
エドも何か言いたげなその笑顔に、感づいたようだ。
「・・・俺達になんか探して来いとでも言いたげな顔だな」
そういうと、どうやら当たった様で。
ロイは頷いた。
エドは大きく項垂れてロイに「何を?」聞いた。
「君たちの故郷、リゼンブールの周辺に、腕の良い雑貨職人が居ると言う噂を聞いてね。
君達なら知っているのではないかと」
ロイは相変わらず笑顔を崩さずのうのうと言うものだから、
エドも大きく溜め息をついた。
「それを探しに行って、俺たちに何か得が有るのか?」
「その周辺でこの頃、錬金術集団が何か作っているらしい情報が有ったが。
其れを探しに行くついででいい。
その職人とやらに之を渡してきて欲しいのだが。行ってくれるか?」
「断っても行かせる気だろ。・・・ま、俺達も情報が不足してたとこだし。
ついでに行ってくるよ」
エドはその手紙を受け取って部屋を出た。
ロイはまた進みもしない仕事にかかる。
暫くして仕事を終えて私が帰ってきた頃。
大佐は机に突っ伏して寝ていた。
大総統になるって何時も言っているのに、こんな状態で大丈夫なのかしら?
今から其れを気にしていては切りが無いでしょうけれど。
そんな事を思いながら、私は大佐の肩に手を置いて揺さぶり起こす。
子供が起きる時の様な可愛げのある声を出しながら起きる大佐は、本当に子供のようで。
「ホークアイ中尉か。何だね?」
まだ夢から覚めていない様子。
「追加の書類です。まだこんなに残っているのに寝ていては、
今日のまた残業ですよ?」
大佐の机にさっき刷って来たまだほんのり暖かい書類を置いた。
大佐としてはとても嫌だったようで、机の上に増やされた書類に顔を顰めた。
しかし、やっぱり例の如く仕事を始めてもまたサボってしまうし。
仕事に集中しないのは何時もの事だけれど、何か気になるのか、外ばかり見つめている。
仕事に集中してもらわないと、困るのは大佐なのに。
「大佐? 何をそんなに考え込んでいるのですか」
私が聞いても答えてはくれないし。
何をするにも上の空。また書類が堪っていく。
しかし、其の日は何事も起こる事無く終わった。
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