シンプルな、ピアス。




st.valentine




久しぶりに、エドとアルが帰ってきたと思ったら。
やっぱりいつもと同じように腕を壊してきていた。

「毎回毎回・・・あんたには学習能力ってモノがない訳?」
「だーかーら、悪かったっていってるだろ!」
「そんな態度でいわれても謝られてる気しないわよ」

はぁ、と溜息をつきながら、ドライバーを動かす。
全壊こそしていないものの、半壊はしている。
何時も何時も、あたしの丹精こめた最高級機械鎧をこんなにして帰ってきて。

「ちょっとは大切に使おうとか思わないの?」
「だぁー!もーわかったっつーの!」
「わかってない!」

怒鳴りつけると、エドは拗ねたような顔で黙る。
まったく、と呟き、直しおわった機械鎧をぺちぺちと叩いた。

「はい、終わり」
「・・・・・・・ドーモ」

あからさまに不貞腐れたような声で礼を言う。
椅子から立ち上がって、無造作にたたんでおいた服を着ると、思い出したように手を叩いた。

「あ、そーだ」

工具を直しながら横目でエドを見ていると何やらポケットを探っている。
どのポケットに入れたか覚えていないらしく色々な場所のポケットを探る。
そして、赤いコートの内ポケットを探った時表情が変わった。
何か小さな箱を取り出すと、こちらを向く。

「ホレ」

短くそういって、手に持っていたソレを投げた。
見事にキャッチして、その箱を見つめる。
ピンク色の包装紙とカラフルなリボンで綺麗にラッピングされた小さな箱。

「何?コレ」

訊くと、くるりとエドは背を向けて。
コートを腕に引っ掛け歩きながら言う。

「今日14日だろ?何時もの礼と、謝罪と、コレカラモヨロシクっつーの込みでな」

ああ、そう言えば、今日はバレンタインデーだ。
最近何故か仕事が多くてそんな事もすっかり忘れていた。

「・・・・・・え・・・・じゃあ、コレって・・・・」
「食べ物のがいいかと思って結構迷ったんだけどな」

そういいながら、ドアノブに手をかける。
そして、ドアを少し開いて、振り向く。
ふっと笑って言った。

「happy valentine.」

パタン、と静かにドアが閉まる。
少し間を置いて、カラフルなリボンもピンク色の包装紙もとり、箱を開ける。
中には、シンプルなシルバーのピアス。
手に持って見ていると、ガチャ、とドアが開く。
ひょっこりと、エドが顔だけ覗かせて、言った。

「あ、一応ソレ義理じゃないからな」

また静かにドアが閉まる。

「・・・・・・・・って、ソレ・・・・」

静かに閉められたドアを見つめ、少し呆れる。
素直じゃないんだから。
苦笑のような笑みを浮かべ、耳につけているピアスを外す。
そして、粋な計らいをしてくれる素直じゃない彼のくれたピアスをつける。
それを鏡でちょっとみて、にこっと笑った。







貰い物です。




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