素直に君に
傍にいて欲しいと言えたらいいが。




「お先に失礼します。大佐」

中尉は仕事を終えて帰ろうとしている。
だが、私は返すつもりはもうとう無かった。

「待ちたまえ。この大雨では帰れないだろう?
 もう少し待って、小降りになってから帰りなさい」

止みそうも無い雨を利用して中尉を引き止める。
中尉は一度窓の外を見た。
そしてゆっくり私のほうを向いた。

「・・・大佐、遠まわしに私に居ろと言いたいのですか?」

溜め息の混ざった声で言う。
理解しているのかも知れないが、
あえて聞かないようにしているようだ。
そして私も同じ。

「どうとってもかまわん。
 とにかく小降りになるまでここで・・・」
「分かりました。小降りになるまでここに残ります」

溜め息と怒りのようなものが混じった声で、
私の言いかけた事をさえぎった。
その後二時間ほど雨は降り続き、
結局最後まで残る羽目になったが。
そして仕方なく不利で家路に着く。
中尉は私に聞こえないくらいの声でぶつぶつと何かを言っている。
聞こえなくとも言っている事は大体想像はつくのだが。
とりあえずまだ小雨になったばかりなのを利用し、中尉を引き寄せてみる。

「何なさるんですか、大佐」

思ったとおりの反応が返ってくる。
私はもちろんのけるつもりは毛頭ない。

「私では嫌かね? ホークアイ中尉」

少しからかってみる。
本当は分かってやっているが、
どうもいつも限度を通り越してしまうようだ。
中尉はしまってあった拳銃を突きつけそうになる。
私はパッと手を離し、逃れる。
それからは呆れたのか少し距離をあけられた。

「・・・君にいて欲しいと言う意思表示でもかね?」

中尉に聞こえるかくらいの声で言う。
中尉は立ち止まって、

「何か言いましたか? 大佐」

振り返りざまに言った。
私は苦笑して首を振った。
こんなんじゃ一生かかっても口説けないな。と。




fin
大佐が大佐じゃないですね。
うちの大佐はこんなのです。


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